• Home
  • 古典音響機器ギャラリー

古典音響機器ギャラリーT&C Classic Audio Equipment Gallery

〜半導体開発の原点に立ち戻る〜

- 2015.05.15 -


T&C Classic Audio Equipment Gallery

 

番外編 その2 フランスのPATHE(パテ)社の蓄音機とレコード 〜センタースタートレコード〜

 

 

 

関連:第三話 エジソン蓄音機

 

 

 

 

  第六話の次に第七話として真空管のお話をする予定でしたが、急きょ面白い蓄音機が入手できましたので先に番外編としてご紹介します。

 

  写真はフランス・パテ社の古い1910年頃の蓄音機で一見すると特に変わった様子もない普通の古いラッパ(朝顔型ホーン)蓄音機に見えます。

 

 

 

  パテ社製蓄音機

 

 

 

 

 

 

 

  実はこのフランス・パテ社の蓄音機はエジソンが発明した円盤型レコード蓄音機と同じ縦溝式レコードを再生する蓄音機で、過去にご紹介した

 

  エジソン蓄音機の縦溝記録方式と同じものです。

 

  当時のビクター社(Victor Talking Machine)など競合他社は当初より横溝記録方式でしたが、パテ社はエジソン蓄音機と同じ縦溝式を採用した

 

  ものの、縦溝式が廃れるとその後に一般的になった横溝式に変えました。そして今回、私が一番面白いと思ったのはその蓄音機だけではなく、

 

  そのレコードなのです。

 

 

パテ社のレコード

 

 

 

 


  実はこのレコードが実に変わっており、普通レコードを聴くときにはレコードにミュージックボックスと言われる音溝から、音を感知する

 

  レコード針が付いた先を、レコードの一番外側の溝に落とし演奏を開始します。そして針先がレコードの回転に伴ってだんだん内側へと移動

 

  しながら終了します。ところがパテ社のレコードは、レコードの中心から外側へと再生していきます。

 

 

 

 

針の動き

 

 

 

 

 

 

                   再生開始位置                  再生終了位置

 

 

 

センタースタートレコード

 

 

 

 

 

  なぜパテ社がレコードを演奏するのにセンタースタート方式と、一般的な外側スタートの2種類を存在させたのか。その理由はわかりませんが、

 

  一説ではセンタースタートのレコードは演奏開始時の位置がレーベルから一番近い位置になるので針を置く目印になるといった説明が有りまし

 

  たが、真偽のほどは不明です。しかし実際に試すと一番内側のレコード溝のスタート位置には一段高くなった一周分の山と言いますか、出っ張

 

  りがあり、そのおかげで針先が常に同じ位置に設定できますので、確かに演奏開始の頭出しは簡単でした。

 

 

 

  尚、この蓄音機はエジソン蓄音機と異なりサウンドボックス(エジソンはレプロデューサーと呼んでいました)が機械式送り機構ではなく、

 

  レコード溝による送り込みになっているため、センタースタートでも外側スタートでもどちらのレコードでも演奏が可能です。

 

  このパテ社蓄音機のレコード針はサファイアで作られており、レコードを1曲演奏するごとに鉄針を毎回交換する針と異なり、相当数のレコード

 

  をそのまま演奏できるように作られています。これはエジソン蓄音機のダイアモンド針と同様です。

 

 

 

  今回は番外編としてフランス・パテ社の面白いレコードをご紹介しましたが、当ギャラリーではいつでもこれら蓄音機とレコード演奏の実演を

 

  行っています。

 

 

 

 

〜 新しい展示品のお知らせ 〜

 

 

 

  当ギャラリーでは音質・音量など、 蓄音機の世界最高峰と称される

 

 

 

ビクトローラ クレデンザ(Victor Talking Machine Company, Credenza)

 

 

 

  を新しく展示 しました。ジャズ・クラシックから軽音楽・浪曲まで在庫はさほど多くはないのですが、78回転SP盤を用意しておりますので、

 

  当ギャラリーでは電気を使わないすばらしい音質の蓄音機の演奏を、当時のままの姿とともに鑑賞、お楽しみ頂けます。

 

 


  蓄音機に初めて触れる方にとって、

 

 

 

     100年前のレコード盤とその演奏装置が奏でる音は、ザーザーと雑音が多くて、何を聞いているのかわからない音?

 

 

 

  ところが実際に聞いてみると、現在のオーディオ装置に近いクリアーで生き生きとした、見かけからは想像できないすばらしい音にビックリ

 

  されることでしょう。そしてそれが「本当の音」なのです。

 

  エジソンが開発した蓄音機を、エジソン自身が舞台に持ち込んでソプラノ歌手の歌声を途中から蓄音機にすり替えたが、観客は気が付かなかった

 

  という逸話があります。その当時の記事やそのソプラノ歌手のレコードを当ギャラリーは用意しております。

 

  文章では伝わらないことですので、百聞は一見に如かず、是非一度聞いてみませんか? 

 

 

勿論お聞きいただくのはコピーなどではなく、オリジナルです。

 

 

 

 

平成27年 5月12日

 

中鉢 博

←前の記事へINDEX次の記事へ→

ページの上部へ戻る