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古典音響機器ギャラリーT&C Classic Audio Equipment Gallery

〜半導体開発の原点に立ち戻る〜

- 2020.08.22 -


T&C Classic Audio Equipment Gallery

第二十六話
シリンダーレコード 「ピンク ランバート」

第二十六話は少し変わったシリンダーレコード(円筒形レコード)についてお話ししますが、レコードの初期の円筒形と円盤型については第三話に解説してりますので参照してください。

また、言葉の使い方ですが、「蝋管」「シリンダー」「レコード」「セルロイド」が混在して使われる傾向があり厳密には蝋管は蝋蜜(ワックス)で作られたものでセルロイド製は蝋管とは呼ばずエジソンはアンベロールと呼び区別しましたが、蝋管(ワックス)シリンダーとセルロイドシリンダーに大別されるもののシリンダーレコード(円筒形レコード)はすべて蝋管と呼ぶことが多くなっています。

さて、蝋管レコードといえばエジソン社の黒色円筒形が有名で市場のほとんどを占めていました。初期エジソン蓄音機円筒形レコードの蝋管は蝋蜜で作られていて、演奏時間も2分でしたが後に4分用の蝋管が作られ、さらに量産性を考えたセルロイド製の4分蝋管がアンベロールおよびブルーアンベロールとして売られました。蝋管の色は当初黒でしたが、4分アンベロールになってから青色のブルーアンベロールとなり、色付き蝋管として販売数は少ないのですが4分用パープル蝋管としてきれいな紫色の蝋管が売られていました。(現在はアンティークショップでもパープル蝋管の入手が難しくなっています)

蝋管「ピンク ランバート」はエジソン蓄音機や二十五話のフランス・パテ社蓄音機の2分蝋管レコードなどとの互換性を持ったいわゆるサードパーティのシリンダーレコードです。

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シカゴのランバート社

調べるとランバート社には悲しい物語がありました。

1900年にトーマス・B・ランバートは、シリンダー記録の量産方法を記述した特許を取得しました。基本原理はエジソンの成形プロセスに近いもので、大きな違いはエジソンが使ったワックス(蝋蜜)の代わりにセルロイドを使用しました。ランバートはエジソン蝋管の互換性があるセルロイドシリンダーを最初に製造したのでした。

このために、ランバートはレコーディングスタジオと工場をシカゴに「ランバート社」として設立しました。

設立後数年の間にシリンダーの色はベージュ、ピンク、青、茶色から黒へと変わってゆきます。

これらのシリンダーレコードは後のエジソンセルロイドシリンダーレコードと構造が異なり、すべてセルロイドで構成されていてエジソンシリンダーレコードのように石膏の内部コアを持っていませんでしたのでランバート蝋管は薄くて軽く、またコスト低減に役立ったと思われます。

ランバートシリンダーレコードのピンク色は珍しく、ランバート社のシリンダーレコードは茶色と黒色へと変わり作られました。

しかしランバートには技術的な優位性が有るにもかかわらず、商売人であったエジソンはランバート社を訴え、エジソン自身の蓄音機の覇権を確保するために高額な訴訟費用をかけ戦いました。

ランバートは、ヨーロッパでランバートが英国のエジソン・ベル・カンパニーとの合弁会社を立ち上げ、続いてドイツのハンブルクに販売子会社を設立し努力はしましたが、高額な法的紛争は結果的にランバートの会社を破産させました。

エジソンは訴訟では勝てなかったが経済面で合法的にランバート社を破産させ勝ったわけです。ランバート社の存在は6年間でした。

エジソンはセルロイドの利点を非常に認識していましたが、ランバートの特許は生きていましたので壊れやすい蝋管(ワックス)材料に固執せざるを得ませんでしたが1912年にエジソンはセルロイドを使用する許可を得てすぐにブルーアンベロールをリリースしました。

いつの時代も「勝てば官軍」でしょうか。

米国でこの2分用Pink Lambertを22曲集めてCDにまとめたものを入手しましたので合わせてご紹介します。

22曲中私が知っている有名な曲は DIXIE LAND 1曲のみでしたが・・・

そのほかに鳥の鳴き声の物まねや行進曲など結構明るい楽しい曲が詰まっていました。

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令和2年8月22日

中鉢 博

 

 

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