- 2018.11.06 -
T&C Classic Audio Equipment Gallery
第十九話 デルビル電話機
第19話は明治時代から昭和にかけて使われた電話機でデルビル型と呼ばれたものです。
寄贈を受け修理中の電話機ですが、現在はNTT回線に接続して使えるものではないのでベルを鳴らして遊ぶだけで弊社取手事業所に展示してあります。
外観が一般電話機と外観が少し異なり、またベルの留め金具に菊の紋が使われていますので限定機種と思われますが基本構造は変わりません。
修理中の電話機 |
着信は交換局から送られる電気信号でベルを鳴らしますが、発信は番号ダイアルがありませんので電話機の横にある手回し発電機または数ボルトの電池で電気を送り交換局を呼び出す方法で通話します。
現在のように自動交換機など有りませんから通話は全て電話交換手と呼ばれたオペレーターを経由し手動で回線を切り替えていました。
電話に出るときはどうして「もしもし」になったかは諸説ありますが、当時の電話交換手が主に女性であり女性の電話交換手が”これから言いますよ”という意味で「申します、申します」と言っていたそうで、この言葉が繰り返し使われる内に縮まって「もしもし」となったとのことのようです。
内部はとてもシンプルで送話器(マイク)と受話器(イヤホン)及び結合トランスしか見当たりませんが、この送・受話器は増幅器を必要としない構造で、また振動などに強く長い間使われました。
面白いのは、この結合トランスが断線していましたので修理のために分解しましたがコイルを巻いてあるボビンが木製で、また鉄心が単純に針金を切って束ねただけでした。この針金をボビンの中に入れる製造中に薄い木材部分が針金で破損しコイルに傷をつけたようで、これが原因で故障したと思われます。
また、このコイルを分解中にコイルを保護する目的で外側に巻いてあるテープと紙を剥がすと、物資の再利用からでしょうかなんと紙が新聞紙でした。
謹賀新年及び定価金2銭5厘と16年1月3日と読めますので昭和16年?の正月新聞を再利用したようです。
送話器の炭素粒が不良でしたので通話実験はできませんでしたが、炭素粒が入手できましたら当時の電話機複数台で通話を行ってみたいものです。
平成30年11月6日
中鉢 博