- 2016.10.6 -
T&C Classic Audio Equipment Gallery
第十二話 手回しオルガン
写真をご覧頂けばお分かりになると思いますが音源盤は硬めの厚紙で作られた円盤型で、音を出したい音階に応じて円周上に穴状に切り抜きされています。スタート位置に一列に並べられた音階に応じたピン配列に押し当てられた紙の円盤を廻すことで穴があいた部分にピンがでっぱり、穴が無い部分はピンがへこむように作動します。
本体横にあるハンドルを廻して内部伝達機構が紙の円盤をゆっくり廻すことで穴の有り無しに応じてピンが上下し、更にピンに接続されたリンク棒が音階に応じたリードの空気穴を開くことでフイゴによって作られた圧縮空気を送り込りこんで演奏する簡単な構造です。 また、音楽の曲は紙製の円盤を交換することで任意の曲を演奏することが出来ます。
演奏するには本体横のハンドルを廻すことで紙製円盤を廻す機構と同時に演奏用の圧縮空気を作り出すフイゴをパタパタと動き、ハンドルは約1秒間に2回転程のスピードで廻して1周で1曲ですが20秒ほどで演奏が終了するもののハンドルの回転スピードが速いので数曲演奏するだけでも以外に疲れます。
3曲ほど演奏しますと手が疲れて嫌になりますので当時の人は結構忍耐力が有ったのではと思いますが、電気を使わない(無かった)ので仕方ないとは思います。
圧縮空気を作り出す機構はシンプルですがフイゴのように可動部分の密閉性を維持するために紙や鹿皮などを用いて逆止弁やフイゴ部分そしてパッキンも革製品で構成されていますが現代のようにゴムやシリコン及び化学接着剤などは存在しませんでしたので耐久性や密閉性を維持することは大変な努力が必要であったと思われます。
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紙製の円盤型音源をセットしハンドルを廻すと演奏が始まりますがまずフイゴ機構部の空間に圧縮空気が貯められこの空気が音階毎に並んだリードの部屋に送り込まれ音楽に合わせた音階のリードにリンク機構を通して空気が吹き込まれそれぞれのリードが音を出しますが結構大きな良い音でブンチャカ・ブンチャカと音楽が流れてきます。
本体も古いながら綺麗な模様印刷が施されており演奏が始まると100年以上前の世界に引きずり込まれるような錯覚にとらわれます。
同じく構造は全く同じですが半分程度の大きさの手回しオルガンもあり、その小さいぶんだけ音源盤が小さくなって音階が少なくなり、また音量も小さくはなりますがそれなりに良い音で演奏を聞かせてくれるオルガンです。
写真のオルガンの音源盤は紙ではなくスチール製ですが操作などは全く同じです。
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さすがに100年以上経過したオルガンは各所に痛みがあり修復するのですが、こだわりを持つと当時は存在しないゴム板やプラスチック及び化学接着剤は使用せずに紙・木や皮とニカワを用いて修復することになるので思った以上に手数と頭を使うことになりますがこれもまた当時の職人に思いを馳せての作業も楽しいものです。
平成28年10月6日
中鉢 博