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古典音響機器ギャラリーT&C Classic Audio Equipment Gallery

〜半導体開発の原点に立ち戻る〜

- 2016.08.10 -


T&C Classic Audio Equipment Gallery

第十一話    100年以上昔のエジソン蓄音機で録音してみました

第三話で紹介しました100年以上前のエジソン蓄音機で録音してみました!! エジソンは開発時に「メリーさんのヒツジ」を歌って録音したと言われていますが何はともあれ録音できるか試した結果をお知らせします。

円筒型の蝋管と言われるレコードを聴くためのエジソン蓄音機は10機種以上を販売されましたが実際に録音可能な機種は限られ数機種になります。

では録音できる蓄音機は何が違うかというと、再生専用は音溝をトレースするだけですので回転機構の力は小さくても良いのですが録音する場合は蝋管の表面の音溝を刻む(彫る)ために回転機構にある程度の力が無いと途中で止まってしまうからです。 動力であるスプリングが新品で有れば普通の再生専用蓄音機でも録音が可能と思われますが、このように録音は強力なスプリング動力が必要なもう一つの理由は使用済みの蝋管の表面を薄く削ってもう一度録音が可能なようにシェーバーと呼ばれる表面を削るカッターが付いています。

(旋盤で円筒形の表面を端から薄く削るイメージです)

勿論、専用のシェーバー機もありますので必ずしも蓄音機にシェーバーが必要なわけではありません。

さて、エジソン蓄音機は部品の簡単な交換だけで録音が可能な機構を備えているモデルのトライアンフが有りましたので今でも100年以上前の蝋管に録音が再現できるかを試します。

まず、録音するには何が必要かを調べてみました。
1. 録音が可能なエジソン蓄音機(ここではモデル:トライアンフを使用)
2. 録音用レプロデューサー(音溝を刻む針が付いた振動板です)
3. 録音用蝋管(すでに録音済みでも表面を研磨して5~7回ほど使えます)



録音用レプロデューサー





録音用蝋管

録音用の蝋管は再生専用蝋管と同寸法ではありますが音溝が刻めるように材質が多少やわらかい茶色の録音用蝋管で表面がツルツルしたきれいな表面の蝋管ですが、面が荒れた蝋管や一度使った録音済みの蝋管を再使用する場合にシェーバーと呼ばれるカッターで表面を研磨します。

実際に録音する場合は再生専用のレプロデューサーを録音用レプロデューサーと交換し、録音用蝋管を本体にセットします。

録音は音の有無に関わらず一定の間隔でギアの送り機構により左から右方向へ少しずつ移動しながら蝋管の円周上に音溝を刻むので一発勝負でとなり途中でのやり直しが出来ません。

でも、失敗した場合はもう一度蝋管の表面を薄く削り元のツルツル状態にすればまた使うことが出来ますので再度最初から録音できますが、何度も繰り返し研削すると肉厚がどんどん薄くなりますので削るのも5回から7回程度が限界でしょう。

研削は蝋管表面を削る「シェーバー」と呼ばれる研削機構が付いた蓄音機または専用機を用いて蝋管の表面を研削しますが削る深さなどは人間が調整しますので蝋管を何度も使おうとすればすでに録音した溝の深さぎりぎりで研削する必要が有りますので研削には人間の感と手先の器用さが要求される部分です。



研削機構

録音は蓄音機のスタートと同時に通常は音が出るラッパと呼ばれる拡声器に顔を突っ込み思いっきり大声でセリフを叫びますと音声がラッパの中を伝わり直接振動板を震わせ、振動板についている針が蝋管の表面に振動を刻んで音声が記録されます。

勿論、100年前も同じように超大型のラッパの前にて大声で歌ったり楽器演奏を直接蝋管に記録していました。(マイクや増幅器などが存在しませんから当然ですが)



録音風景

録音時間は2分間ですが、口述では大声を張り上げるので2分は思ったよりくたびれますが2分以内であればどんなに短くても問題は有りません。

録音が終わると早速レプロデューサーと呼ばれる部分を再生用に交換して先程録音した蝋管の左端からトレースしますと・・・・・思ったより音が小さいのですが確かに録音した音声が再生されました。

音が小さいのは100年前の蝋管の蝋が硬化して音溝の刻みが十分にされていないかレプロデューサーのカッターが摩耗しているのではないかと推測されます。 いずれにしましてもなんとか100年以上前のエジソン蓄音機で録音そして再生が無事できました。

平成28年8月10日

中鉢 博

 

 

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