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古典音響機器ギャラリーT&C Classic Audio Equipment Gallery

〜半導体開発の原点に立ち戻る〜

- 2016.08.08 -


T&C Classic Audio Equipment Gallery

第十話  大正時代の真空管ラジオ

日本では初めてラジオ放送が始まったのが大正14年ですが、米国ではすでにこの5年前からラジオ放送が始まっていました。

米国では放送開始直後は第一話で紹介しました鉱石ラジオで多くの人がイヤホンでラジオ放送を聞いていましたが間もなく同時に多くの人が聞けるように とスピーカーを鳴らすために増幅器に真空管を使ったラジオが普及していきました。

真空管は第七話で紹介しましたが、現在の半導体アンプに相当するものです。




初期の真空管





大正12年 米国アトウォーター社製

現在では各家庭に当然の如くある電源コンセントから電気を取り出すことが出来ますが、当時は電源コンセントが無い家庭も多くまた真空管の構造から真 空管は電池で動かしていました。

勿論、現在電気店で大量に販売している単1や単2といった安価な乾電池と異なり、更に真空管を作動させるためにはヒータを点灯させる電池と増幅作用 をさせる60V以上の高電圧を必要としたことから蓄電池を何個も直列に接続して高電圧を得るのでヒータ用蓄電池と合わせると10キログラム以上の重量とな ることもあり、更に寿命がさほど長くないので頻繁な電池交換が必要で、よほどのお金持ちでないと維持できなかったと想定されます。

このために日本でも放送開始の大正14年からは多くの人が電池を必要としない鉱石ラジオを使っていた記録が有ります。(ギャラリーに一部の調査記録 本が有ります)

また、放送開始直後の真空管ラジオの多くは輸入品であり高価なことから一部の富裕層が購入していたと思われます。



鉱石ラジオ



真空管ラジオ(米国ギルフィラン社製)

使われた真空管もRCA製などの型式UV199やUV201等に限定され、且つ耐久性が低かったこともあって消耗品扱いとされて交換が簡単なようにラジオパネル全面に真空管を装着したり、またラジオの上蓋を簡単に開けて交換できる構造に作られていました。



大正14年 上蓋を開けて真空管の交換が容易にできる構造

その後、ラジオ放送局が増えると共に電源コンセントから電気を供給できるラジオが開発された昭和5年頃からは一気に国産ラジオが普及して多くの会社が参入しました。


大正13年 マニア向けラジオ(米国フェデラル社製)

当時のラジオを見ていますと国力の差と芸術に対する理解度の差でしょうか、ラジオの構造や部品及びデザインを見ても芸術性と精神的豊かさの差を垣間見ることが多々あります。



木彫り彫刻のスピーカー全面グリル



芸術的なラジオ全面の模様

これらのラジオは大正10年から大正15年にかけて米国で販売されたものです。 このようにすでにラジオが家具の一部として観賞できる芸術性を持った本体とスピーカーが大正時代に販売されたことに驚きを感じます。



大正14年前後の各種ラジオ

平成28年8月8日

中鉢 博

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