- 2015.03.30 -
T&C Classic Audio Equipment Gallery
第六話 電圧・電流計
第六話は電気技術者にとって3種の神器のひとつである電圧計・電流計についてお話しします。
四方山話はご専門の方から専門知識のない方々へ、幅広く古典機器のお話を面白くお読み頂きたく配慮しているつもりですが、つい専門用語が
出たりとご迷惑をお掛けすることがありますが、ご容赦頂ければ幸いです。
さて、日常生活において電気計器はほとんど縁が無い機器ですが、電気を扱う方々にとり必需品なのは電圧計・電流計です。
例えば我々家庭において必要な測定機器といえば、必ず置いてあるのは「体温計」や「温度計」があり、風邪をひいたときなどに使う体温計は
必ず家庭で1個は必要な測定計器のひとつです。電気を扱う方々も同様に必要な最低限の機器が電圧計・電流計であり電気の電圧や、流れる電気量
を計るものです。
1916年の米国WESTON ELECTRICAL社製電流計 モデル280
このような電圧計は1800年後期には実用の域に達して、1900年代に入ると写真のような米国WESTON社製電流計が一般に市販されるようになり
ました。さらに専門以外の人でも手軽に電池などの残電圧を計る測定器として、手のひらに収まる簡易型の電圧計・電流計が販売されるように
なります。ここでは1916年頃、総合販売店であるシアーズ社が販売していた電流計・電圧計の計器を写真でご紹介します。
100年前の簡易電圧計・電流計(ハンディメーター)
基本構造は現在のアナログメーターと何ら変わりはなく、指針が付いたコイルを永久磁石の周に浮かせ、コイルに流れる電流と磁石の反発力を
応用したものです。
使い方は電圧計に付いている電線の端子をマイナスとしてケースや電池のマイナス端子に当て、次に電圧計本体の外周下側にある突起端子を測定
したいプラス端子に当てて指針目盛(メーター指示板)の値を読みます。
当時のバッテリーなどは高電圧電池でも48V程度が最大ですので、端子に指先などが接触しても感電することはさほど無いとは思いますが、
ショートなどの可能性を考慮しますと、結構測定自体危険を伴う作業であったと思います。
現在のテスターではこのような危険な構造のものはありませんが、当時はかなり重宝したと考えられます。
安価なデジタル式テスターが一般に出回り始めたのが1975年ごろでしたでしょうか、現在は機械式アナログメーターよりデジタル電圧・電流計が
精度や使い易さ、また性能を考慮してもはるかに安価で出回っていますので、アナログメーター式はほとんど見かけなくました。
精度について
測定器に精度はつきものですが、最近はやりのトレーサビリティに近いものがすでに米国では1900年初めには確率されていました。
ここで紹介する電流計は1923年4月11日(日本の年号では大正12年)の日付とサインのある測定精度の証明書が付いた電流計です。
米国のWeston社モデル45を写真でご紹介します。
近年、測定数字の信頼性表現として「不確かさ」といった考え方が主流ですが、はるか昔にすでに精度の表現方法が有ったことに驚かれます。
WESTON ELECTRICAL社製 校正証明書付き直流電流計 モデル45
証明書部分写真 校正担当者はJ ブリッティングさんと読めます。
証明内容
この計測器は国際アンペア(現在の電流基準より少し小さい)を表し、
スケールの精度は華氏75度でフルスケールの1%の1/2の精度内に正確な
校正がなされています。
証明されている温度の華氏15度より高いもしくは低い範囲の変化は、
校正証明されているフルスケールの1%の1/2の誤差の範囲を超えることは
ありません。
より高い精度を求める場合、測定値を以下の式で演算します。
I + 0.00028 x ( t - 華氏75度)
tは機器の温度
Iはメーター指示値
Weston Laboratory, Newark, N.J., U.S.A.により標準化
1923年 4月11日
実施者 署名、証明者 署名
最近は真空管式ラジオを知らない方が増えてきましたので、次回は現在のICといわれる半導体やトランジスターの前身である真空管について
お話ししようと思います。
2015年 3月30日 中鉢 博