- 2017.8.10 -
T&C Classic Audio Equipment Gallery
第十六話 ヘッドフォンスピーカー アンプリトーンのご紹介
第16話は珍しい古いヘッドフォンスピーカーをご紹介します。 写真は1922年製のヘッドフォンスピーカーで米国ニューヨーク州のKing Amplitone 社製 モデル Am-pli-tone です。
ラジオ放送が始まった頃は大きな音の出るスピーカーの存在が極めて少なく、多くはヘッドフォンで聞いていました。
ヘッドフォンは装着している人しか聞こえませんでしたので何とか複数の人で聞くことができないかと考案されたのがこのヘッドフォンスピーカーでした。 構造はいたってシンプルでヘッドフォンの耳に当てる左右の部分をこのアンプリトーンに装着し拡声器として聞くものでした。
従って大きな音で大勢のひとで聞くという訳にはいきませんが、静かな場所でかろうじて複数の人が聞ける程度でしょうか。
日本のラジオ放送が始まったのは大正15年(1925年)ですが、米国では大正10年には放送開始され多くのリスナーは鉱石ラジオまたは低出力の真空管アンプを使っていましたので放送を聞くにはヘッドフォンが主流でした。当時のヘッドフォンを日本では両耳レシーバーとも呼び左右両耳に付けるイヤホンをヘッドバンドで固定した製品です。
ヘッドフォンの音量は小さくヘッドフォンを付けている人しか聞くことが出来ませんが、少しでも多くの人に聞かせるために考案されたのがこのアンプリトーンで、構造はいたって簡単で写真で見る通りヘッドフォンに耳が当たる部分(音が出る部分)に拡声器を設置しただけのシンプルな構造で両耳に当たる部分を左右合成した音が出る構造になっていますのでヘッドフォンの耳当て部分をスピーカー下部のゴムブッシュが付いた部分に設置するだけです。
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その後に基本的構造はそのままですがヘッドフォンの片側構造をそのまま使いホーンスピーカーの原型として多くの会社からホーンスピーカーとして商品化されました。
振動板は薄い鉄板を使っていますので音は硬く決して良い音とは言い難いのですが明瞭度は高い音質となります。
しかし、すぐにホーンスピーカーが普及すると同時にコーン紙を用いた音質・音量の優れたスピーカーが開発されるとほんの数年でホーンスピーカーやこのヘッドフォンスピーカーは廃れてしまいました。
しかし、このホーンスピーカー(通称ラッパスピーカーと呼ばれた)を今聞きますとどことなく時代と言いますか郷愁を感じる音ですが、私が年を取ったためでしょうか?
平成29年8月10日
中鉢 博