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古典音響機器ギャラリーT&C Classic Audio Equipment Gallery

〜半導体開発の原点に立ち戻る〜

- 2023.1.12 -


T&C Classic Audio Equipment Gallery

第三十話
「ルミエール」プリーツメンブレンスピーカーとビクタールミエールラウドスピーカーNo.1

第三十話は新たに入手しました1923年製「ルミエール」プリーツメンブレンスピーカー及びビクタールミエールラウドスピーカーNo.1 の紹介です。

十五話で紹介しました蓄音機グラモフォン社HMV460で通称「ルミエール」の振動板と同じ構造の「プリーツメンブレンスピーカー」と呼ばれる扇子型をしたダイアフラム振動板で作られています。

「ルミエール」プリーツメンブレンスピーカー

当然ですがルミエールによって作られたものでモデルは Haut-Parleur L. Lumière Grand Modèle à Pied, Type A(オー・パルルール L.ルミエール グランドモデル タイプA)でメーカーはGaumont, Radio-Seg; Paris(ゴーモン、ラジオ部門 : フランス・パリ)です。

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プリーツメンブレンスピーカーはルイ・ルミエールの発明ですが、これを思いついたのはレストランでルイ・ルミエールを含む数人の人々と昼食中に出されたデザートが展開された紙の扇子で飾られていて、それを見たルミエールがプリー紙の形をしたスピーカーを作るというアイデアを思いつきゴーモンによって製品化され販売されました。

プリーツ型振動板は紙製なのでスタンドランプ型としてスピーカーが隠されて保護された製品もあります。

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蓄音器に使われた紙製プリーツ振動板は金箔処理されていましたが、このスピーカーはクラフト紙が用いられていて金箔処理はされていません。プリーツ紙が後世に交換されたのではといわれていますが、このスピーカーを見る限りオリジナルではないかと思われます。

さて、当時のスピーカーはほぼすべてハイインピーダンスなので変換トランスを用いてiPadやオーディオアンプにつないで鳴らしてみました。音質は現代のスピーカーと比較して低音が出にくいことと高音が固めの音ですが100年前の当時の主流であったホーンスピーカーと比較すればはるかに高品質な音の部類であったと思われます。

何よりこのスピーカーは厚みがないので面白い構造です。

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ビクタールミエールラウドスピーカーNo.1

このスピーカーもルミエールによるプリーツメンブレンを採用しており振動板を見る限りでは第三十一話とほぼ同じ構造ですが駆動する構造が若干異なる程度でありボックスに収められているので正面に対して裏側の面にもまったく同じプリーツメンブレンが設置されていてどちらが正面か迷いますが裏側のプリーツメンブレンは駆動部分がなく単に蓋としての構造ですが音の位相が反転して出ますので後面に対しての音の出方が微妙なものの音の広がりが感じられます。

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このビクタールミエールラウドスピーカーNo.1は基本構造として1911年のルミエールの特許であるプリーツメンブレンを用いブロンズ色のアート紙で作られていて1925年に構造のいくつかを特許として取得し、1920年代のバッテリーラジオ用スピーカーとしてビクタートーキングマシンカンパニーによって製造されました。

尚、世界で初めてラジオ放送が開始したのが1920年ですから1911年の特許であるルミエールのプリーツメンブレン振動板は当時の蓄音器用として発明したもので後にラジオ用振動板として応用されたことがわかります。



令和5年1月6日

中鉢 博

 

 

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