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古典音響機器ギャラリーT&C Classic Audio Equipment Gallery

〜半導体開発の原点に立ち戻る〜

- 2020.05.15 -


T&C Classic Audio Equipment Gallery

第二十三話         ストリートオルガンについて その4 オルガネッテ"F"ローラーオルガン

ストリートオルガンその4では20話で入手しましたオルガネッテ"F"ローラーオルガン修理のご紹介です。

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オルガネッテ"F"ローラーオルガンの概要

CLARIONA120年以上前に作られたオルガンで22話の自動オルガンと同じですがロールペーパーに空けられた穴が楽譜ですが、楽譜ロール紙はボビンにまかれた状態のものではなく単に長い巻紙のままの状態での保管ですので使用するときはロール紙を手前から巻き込んで後部より排出する方法でこれといったガイドもありませんので演奏が終わると吐き出したロール紙を手で巻き直す必要があります。

音の元になるリード弁ですが、アコーディオンなど高級機は一音に対して3対など複数のリードを微妙に周波数をずらして音を出しますが、このオルガネッテは一音に対してリード弁が一個ですのでシンプルな音になります。

さすがに120年以上経過した木製本体は痛みが目立ちますが当時として良くできた製品と思います。

このロール紙を本体にセットし、クランクハンドルを回してロール紙を送ることで穴が開いた位置のリードが鳴り音楽を演奏しますが、22話のオルガンと同じく穴は14個での演奏なので14音となり2オクターブに少し足りなくしかも半音が1か所しかありませんし、伴奏を伴う音楽では限界かもしれません。

22話の巻紙と同じ穴位置ですのでロール紙が兼用できそうですが、穴位置は同じでも全幅が5ミリほど短く、しかも高音と低音の位置が逆なので何か細工をしないと兼用はできそうにもありません。

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ロールペーパー楽譜

さて、この入手した機器の修理を進めるには難儀しました。

この機種もフイゴと呼ばれる空気を送るユニットを真空引きとして使用しています。

分解してみると、ほとんどの部材がそのまま使用できない状態でした。

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フイゴやチャンバーはボロボロでした

修理はフイゴの可動部分である布や逆止弁として使う革をすべて交換します。

また木材も各部品に分解して平面度が出るようにヤスリ掛けしました。

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フイゴの可動部分の革加工制作

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バラバラになった内部写真木材は表面を磨きました

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修理途中その1

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修理途中その2

修理が終わり、ロールペーパーをセットして早速鳴らしてみました。

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作動は快調で心地よい音と音量で演奏できました。

リードバルブは22話と同じものなので同じ音質・音量で鳴ります。

実際に演奏するには1分程度のロール紙をセットしてクランクを回しますが、これも結構忙しい作業で演奏が終わると排出したロール紙を手で巻き戻す必要がありますが当時は今と違って優雅な時代だったと思います。

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鳴らすには関係なのですが、上蓋が欠損していましたので木材を加工して制作してみました。(写真は塗装前です)

木材の端面をきれいな波型に加工するルーターまたはトリマーと称する電動工具があり、初めて使ってみたのですが端の仕上がりは何となくプロ並みの仕上がりになるのはびっくりです。

塗装は下塗りにオイルステインを使い、仕上げにマホガニー及びローズ色を塗って色合わせを行いました。

また、修理の際に紙を送るローラーはオリジナル材質がボロボロで何を使っているのかわかりませんでしたが当時ゴムなどありませんから勝手に推測して細い鉄丸棒に薄い革を巻き付けて同じ径に仕上げましたが適度な摩擦が発生するので良好な作動となりました。

これでしばらく動かすことができそうです。


ストリートオルガン制作の途中経過その4

製作中のストリートオルガンの進行状況です。

今回は難関である一つのロール紙送り機構とロール紙に空いた穴に空気を通す機構の制作です。

14個の穴の開いた部分にロール紙を通しますが、木材は意外に紙との摩擦が大きく、隙間があれば空気が漏れるので強くもなく弱くもなく紙を挟んで滑らさなければなりません。テフロン材など使えばつるつるですが当時はそんな材料もなく悩みどころです。

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穴加工した部材

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ロール紙の送り機構

この分が完成すると、後は空気を送るチューブ取り付けで何とか演奏できる状態になります。

この後は各部の手直し調整などを行い、外装を考えて見たいと思います。



令和2年5月15日

中鉢 博

 

 

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